舞踊の象徴するもの
 
 
 

華やかな衣裳をまとい、リズミカルで流麗な肉体の動きを見せる舞踊は
19世紀末大いにもてはやされました。
当時舞踊は「肉体の力と霊の力の完全な合体、人間の始原的な調和」を
象徴すると考えられ、
世紀末の芸術家は踊る女を生命の象徴としてとらえました。
サロメが好まれた理由の一つも、彼女が「踊る女」であったからです。

詩人ポール・ヴァレリーは
「生命は踊っている女だ。自分のした跳躍を雲の上までつづけて行けたら、
女であることをやめて神になるかもしれない踊り子」と述べています。

世紀末芸術の象徴的モティーフとしてよく登場するのは
はっきりとした形でとらえることができず、絶え間なく変化する動きと、
流動的な性質によって豊かな運動感と多彩な装飾的効果を
同時に表現しうるようなモティーフです。
舞踊はその一つとして取り上げられました。
これらのモティーフは人間の心理を象徴するもので、
根源的な生命力の神秘にせまるために芸術家は想像力を駆使し、
現実にはありえないような幻想的表現を生み出しました。